天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
「そういや、誕生日は土曜だから、仕事休みだろ? ちゃんと空けとけよ」
「えっ?」
「さっき言っただろ。これから三カ月の間、俺に時間をくれって。誕生日祝ってやるから、どっか出かけるぞ」
い、言ってたけど……つまり、デートしてくれるってこと?
直接声に出して聞けばいいのに、勇悟と再会してからの私は動揺しっぱなしで、まったくうまくしゃべれない。
しかも勇悟ときたら、三年以上会えずにいたのが噓みたいに、優しいんだもの。調子が狂うよ。
でも……私にもようやく春が来たって、思っていいの?
心の中で問いかけても誰も答えてはくれないけれど、凍り付いていた恋心から、雪解け水のような、あたたかい滴がしたたるのを感じる。
「聞いてるか? おーい、絢美」
ぼうっとしたままの私を見かねて、勇悟が私の顔の前で手を振る。
「き、聞いてる! 誕生日、すっごく楽しみにしてる!」
「おお。じゃ、また改めて連絡するから」
子どものようにはしゃぐ私に、勇悟もふっと目元を緩める。それから大きな手をポンと私の頭の上にのせて軽く叩きつつ、見たことのない穏やかな顔で笑っていた。