天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
二度目の観覧車で甘いキス

 十二月二十四日、土曜日の午後。夢にまで見た勇悟との初デートに向かう私は、待ち合わせ場所である駅のコンコースまで息を切らして走っていた。

 気合いが空回りして身支度に時間がかかりすぎてしまい、乗るはずだった電車に乗り遅れてしまったのだ。

 数分後には次の電車がやってきたが、約束の時間に遅刻するのはは確実。すぐさま【ごめん! ちょっとだけ遅れる!】と勇悟にメッセージを送ったものの、できるだけ待たせたくないので、こうして走っているわけだ。

「勇悟!」

 人波を縫って、ようやくベンチに座る彼の姿を見つけると、私は迷わず名前を呼んで駆け寄った。スマホに視線を落としていた勇悟が顔を上げ、軽く微笑んで立ち上がる。

 彼の服装は、グレーのチェスターコートの下に黒のタートルネックニット、ボトムは黒のウールパンツで、足元はコーヒーブラウンのサイドゴアブーツ。

 デートを意識してくれたのか、家族会議の日よりかっちりとした雰囲気のファッションに、胸がきゅんとときめいた。

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