天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
「遅れてごめんね。どれくらい待った?」
「別に大して待ってないよ。おめかしに時間かかってたんだろ? かわいいじゃん、このくるくる」
勇悟の手が不意に顔の横に伸びてきて、コテで巻いたサイドのおくれ毛を軽くつついて揺らした。
今日のヘアスタイルは、かなり苦労して作り上げた編み込みのポニーテール。ファッションも、ミディアム丈のノーカラーコートの下に、タイトなシルエットのニットワンピース、足元はタイツにショートブーツを合わせ、フェミニンにまとめてみた。
「あ……ありがとう」
遅刻までして頑張ったお洒落を評価されると、照れくささもあるけれどやっぱりうれしい。
「じゃ、行くか」
「うん」
先に歩きだした勇悟が、軽くこちらを振り返って「手」と短く言う。
ドキッとしながらもおずおず手を出したら、勇悟はギュッと私の手を握り、自分のポケットに突っ込んだ。
こ、これ……ラブラブなカップルが寒い時にするやつ!
内心そう叫んで舞い上がっていたが、勇悟は涼しい顔で前方を見つめているだけなので、にやけそうになる口元をきゅっと引きしめ、黙って彼の隣を歩いた。