天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
思わず、自分から勇悟の手に自分の手を重ねて、ギュッと握る。勇悟はふっと微笑んで、からかうように言った。
「もうすぐ頂上だから、怖くなってきたか?」
「……うん。そう。やっぱり苦手かも、観覧車」
なんて、嘘だけど、そう思ってくれていた方がいい。
勇悟の本心がわからないまま、勢いに任せて好きだなんて言えない。
「怖いなら、目ぇつぶってろ。昔みたいに」
「覚えてたんだ」
うれしい。私だけが後生大事にあたためている記憶だとばかり思っていた。
ささやかな幸福に浸るように、目を閉じる。これで本当に、あの時と同じ――。
そう思った瞬間、衣擦れの音がして、唇に柔らかいものが触れた。反射的に瞼を開くと、勇悟の形のよい唇がゆっくり離れていくところだった。
今……もしかして、キスした?
「怖いの、忘れられただたろ?」
呆気にとられ、目を瞬かせるしかできない私に、勇悟がいたずらっぽく笑う。
ねえ、どうして思わせぶりなことばかりするの? そう聞きたいのに、聞けない。
ファーストキスの時のように、『なかったことにして』と言われたら、立ち直れないから。
幸せな夢を覚ましたくない私は、まだ至近距離にいる勇悟の瞳を覗き、囁くように告げる。
「まだ、怖い」