腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。

夜這い

あれ?


次に目を開けると、部屋の電気は消えていて隣には鷹峯さんの背中が見えた。肩がすやすや動いていて、熟睡しているのが分かる。


あれ? あれ? あれれれれ〜??


私、あのまま寝ちゃったんだ。髪乾かさないままだったし傷むなぁ。


……じゃなくて!!


か、身体が勝手にっ……!!


私の身体が、するりとベッドから抜け出す。あ、裸だ。そうだよ、渡された服着てないもん!!

そしてあろうことか、「私」は鷹峯さんを仰向けにしたかと思うと裸のまま彼の身体に(またが)る。Tシャツの(すそ)からちらりと覗く鷹峯さんの割れた腹筋。そこに指先が触れると、彼の身体がぴくりと揺れた。

ちょ、ちょっと春夏っ……。

なにこれ、止めようと思っても声も出ないじゃん!


「ん……」

鷹峯さんが身動(みじろ)ぎしてうっすらと目を開ける。ダメ、私裸なんだから見ないで!!

「〈鷹峯さん……抱いて……〉」

違う。私じゃない……。春夏がっ……。

「〈ねぇ……抱いてよ……〉」

「私」の指が、片手は腹筋へ、そしてもう片手はそっと鷹峯さんの首をなぞる。

「っ……」

あ、鷹峯さん、また少しだけぴくって反応したぞ。性感帯か?

でも次の瞬間、鷹峯さんはにんまりと不敵な笑みを浮かべた。

「ふふ……随分と積極的ですねぇ。You are such a dirty girl.(とてもいやらしい子だ)」

裸の私を見上げたまま、鷹峯さんはまんざらでもなさそうに口角を上げた。

いや、そこは拒否してよ! 分かるでしょ私じゃないって!!

「綺麗な身体……良いですねぇ、そそられますよ」

「あっ……」

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