ファーストソング
第三章 春分、冬と夏の覚悟
あれから一週間の月日がたった。

未だに佐久間夏輝は病室に現れていない。


「いくら完成するまで来なくていいって言ったって、もう一週間なんだけど。」
思わずそう呟いてしまうほど、彼がくることが当たり前になっていた。


「仕方がないですよ。あの男の子には、学校もあるんですから。」
「そうだけどさぁ。」


そう話しかけてくれたのは、私の担当ナースさんの鈴木(すずき)ユリさんこと鈴さん。
たまに看護学生もくることがあるけどこの人がずっと担当してくれている。

よく入院してたけど、私だって学校に通っていたことはある。
けど学校に通っている年齢で入院していると、よく学校の話題はNGと思われがちだがそんなことはない。
少なくとも私は…。

それをよく知ってくれている鈴さんは遠慮なく会話してくれる数少ないナースさんなのだ。


「それに静かでいいじゃないですか。毎回注意するの大変なんですよ!全く。」
「はは。五月蠅いもんね、彼。」
「五月蠅いってものじゃありません!」


そしていつも佐久間夏輝を怒っているナースさんでもある。
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