ファーストソング
「今度は私からも注意しておくよ。」
「そうしてください。」
「うん、ごめんね。」

「…長瀬ちゃんが謝ることじゃないですよ。」
そう言いながらも記録を取る鈴さん。


仕事が出来る人ってこういう人なんだろう。
私も大人になれたら、こういう女性になりたかったなぁ。

そう小さな夢をみてしまう。


「うん。今日も異常なさそうね。やっぱり規則正しい生活のおかげですかね?」
「そうかも。まぁ、パソコンは触っているけどね。」
「でも長瀬ちゃんが作曲できるなんて知らなかったですよ!先生から聞いた時は驚きました。」

「まぁこんな体じゃん?小さい頃から学校行った後はずーっと家で引きこもってて、その時にいろいろ貰ったの。家で出来る趣味をみつけるために両親と姉から。」

「あら、いい親御さんとお姉さんじゃない。とっても羨ましいですよ。」
「鈴さんは?どういう家だったの?」
「私?私の家は母子家庭でね?母の影響でこの仕事してるんですよ。」
「ってことは鈴さんのお母さんもナースさん?」
「そ。ベテランもベテラン。色々とメンドクサイわよ~?」


そういう鈴さんの顔はどこか幸せそうだった。
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