ファーストソング
「え、ちょっと!?」

「ってことで、俺今日何も準備してないから、また明日来ますね!その時俺が歌った曲も聞かせるんで!んじゃ!失礼しましたー!!」


そう走りながら大きな声で言う彼に、
手を伸ばしながら「…うそでしょ?」と小さく呟くことしかできなかった。

まるで嵐のような人だ。

急に現れて、急に消える。

外からナースさんの「走らないでください!」っていう声に「すいません!」っていう大きい声も聞こえる。
絶対反省してないな、アイツ…。


「騒がしい奴…。」


あんなチャライ男が毎日通うわけがない。
そう思っていた。

でも、少しの希望もあった。

彼が私の残り少ない人生を変えてくれるんじゃないかって。
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