ファーストソング
第二章 春分、冬と夏の交流
翌日、いつも通り読書をしていると思いっきり扉が開く。
デジャヴを感じ、扉の方を向くと、そこには佐久間夏輝がいた。


「本当に来た…。」


思わずそう呟くと、彼は昨日同様ズンズンとベット前まで来た。
ここが個部屋じゃなかったらどうしたんだろう?と思うほど音が大きい。

遠慮という文字を調べて欲しい。


「本当に来たって、そりゃ来るでしょ!約束したし!」
「一方的にでしょ?」
「でも約束したから。」
「…あっそ。」


本当に来た事に少し驚きつつ、読書に戻る。


「ねぇ何読んでるの?」
「恋愛小説。」
「あ!これ映画化する奴だ!」
「え、そうなの?」
「確か、クラスメイトの女子が騒いでたわ。」
「へぇ。」


病院の売店で適当に買った本だったけど、そんなに人気だったんだ…。
まぁ人気じゃないと売店にまでおかないか。

それ以上話題がないのか、静かな時間が続く。

気まずい空間に耐えられなかったのか彼が口を開く。
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