幼馴染 × 社長 × スパダリ
涼ちゃんのご両親
「あらぁ…萌絵ちゃん、久しぶりね…綺麗になっちゃって…さぁ早く中に入って…」
涼ちゃんのお母さんは、私を見るなり目を細めて微笑んでくれる。
優しい笑顔は昔と全く変わっていない。
涼ちゃんはお母さんに似ている。
整った上品な顔のつくりは、お母さん譲りなんだと確信する。
リビングに入ると、涼ちゃんのお父さんが立ち上がり満面の笑みを向けてくれた。
お父さんもかなりの “イケおじ” という感じだ。
涼ちゃんが眉目秀麗なのは、この両親の遺伝子を引き継いでいるのだろう。
「本当に萌絵ちゃんかい? 涼介が急に萌絵ちゃんを、連れて来るって言うから驚いたよ…嬉しいなぁ、信じられない。…大人になったねぇ」
リビングに通され、ソファーに座ると、涼ちゃんのお母さんがコーヒーカップを置きながら、少し神妙な顔をした。
「萌絵ちゃん、ご両親のことは…残念だったわね…私達は後から知ったの…すぐに駆け付けなくてごめんなさいね…」
すると、涼ちゃんが突然口を開く。
「母さん、もう昔の話は萌絵にするなよ…思い出して辛いのは萌絵なんだからな…」
「そうね…ごめんなさいね、萌絵ちゃん。」
涼ちゃんは私を助けてくれた。
もうだいぶ心の整理は出来ているけれど、自分の両親の話をされると、やはりまだ辛い。いろんなことを思い出してしまう。
「ところで涼介、萌絵ちゃんは今、お前の会社に来てくれているんだって?」
お父さんが、話題を変えるように話し始めた。
「あぁ…でも最近なんだよ。偶然ある店で再会したんだ。そこで俺がスカウトしたんだけどね…」
「萌絵ちゃん、涼介が迷惑をかけていないかい?」
「はい。二階堂社長には良くしていただいています。」
お父さんは、ニコリと微笑むと、急に何か思いついたようだ。
「萌絵ちゃん、彼氏はいるのかい?…涼介じゃ嫌かもしれないけど、萌絵ちゃんみたいな嫁を、涼介には探すようにといつも言っているんだけどね…」
「…えっと…あの…」
私が答えに困っていると、涼ちゃんが突然話始めた。
「父さん…父さん達の希望通り、俺の嫁は萌絵にしたんだ。」
「涼介…どういうことだ…」
お父さんもお母さんも驚き過ぎて口が開くほどだ。
きっと意味が分からないだろう。
「この前、会社でちょっと事件があってね…その時に萌絵が婚約者だって、皆の前で言っちゃったんだよね。…婚姻届けも実は出しちゃったんだ。」
こんなことを聞いたら、きっとご両親は怒るのではないだろうか?
少しの沈黙がとても気まずい…。
最初に口を開いたのはお父さんだ。
「涼介、お前…なんで先に言わないんだ…そんな大切なことを…」
「父さん、ごめん…」
「涼介、何で謝るんだ。父さんも母さんも、嬉しくて胸がいっぱいだよ…これで月岡さんとの約束が守れるよ…」
「約束?」
なんと、涼ちゃんの両親と私の両親は、お互いの子供を、結婚をさせたいと話していたようだ。
そんな約束をしていたなんて、聞いたことが無い。…驚いて、言葉が出ない。
すると、涼ちゃんのお母さんは、いきなり立ち上がり、私を引き寄せて自分の胸に抱きしめた。
頭を優しく撫でてくれる。
自分の母親を思い出し、胸がジーンと熱くなり、心臓をキュッと何かに掴まれた感じがする。
「萌絵ちゃん、嬉しいわ…こんなに可愛い娘が出来たなんて…夢みたいだわ…」