幼馴染 × 社長 × スパダリ


涼ちゃんを見送った私は、いつも通りに会社へ向かう。
秘書課に着くと、美香が驚いた様に近づいて来た。


「萌絵ちゃん、授賞式に行かなかったの?」
「…う…うん。」
「二階堂社長のこと、心配じゃないの?」
「…心配?」
「だって、綺麗な女性が沢山いるんだよ。二階堂社長は素敵だから狙われるよ…きっと…」


美香に言われるまで、まったく考えていなかったことだ。

でも、私は涼ちゃんを信じたい。

なるべく余計なことは考えず、受賞することだけを祈ることにした。
なんとしても、受賞して欲しい。

結果が発表になるのは、明日の夜だ。
待っている時間は、とても長く感じる。
胃が痛くなりそうだ。
私がこれだけドキドキしているのだから、涼ちゃんは恐らくもっと、気を揉んでいることだろう。


夜になり、そろそろ涼ちゃんが、シカゴの空港に到着するころだ。
すると、涼ちゃんからビデオ通話が来た。


「萌絵、まだ起きてたかい?無事に空港に着いたよ。」

「涼ちゃん、無事に着いてよかった。」


今日の朝、見送ったばかりなのに、とても長く会っていなかったように感じる。
“早く会いたい” と言いたいところだが、涼ちゃんに負担をかけたくないので言葉を飲み込んだ。


「萌絵に良い知らせをプレゼントしたいよ…」


もちろん、涼ちゃんには受賞して欲しい。
ただその反面、受賞することで、遠くに行ってしまうような、手の届かない人になってしまうようで、少し寂しい気持ちもある。
何故かモヤモヤした気持だ。

いろいろな思いが、頭の中をぐるぐると回ると、目が冴えてくる。
まったく眠れそうにない。

さらに、美香に言われたことも、心に引っかかっている。
確かに美しい女性が、授賞式には沢山来るだろう。
涼ちゃんは何処にいても目立つことには変わりない。


(…私は涼ちゃんの妻なのだから、しっかりしなくては…)


私は一人で顔を左右にフルフルと振って、余計なことを考えないように努めた。


< 61 / 71 >

この作品をシェア

pagetop