キラキラ星
同じフロアにある常務室へ向かう。

市川さんの病気の事が心配だった……

コンコン♪

「市川常務、失礼します。」

「やあ、久しぶりだね。坂田くん。」

「あの…社長から病気の事を聞きまして、
その…何て言えば良いか……」

「うん。何かね〜知らないうちに膵臓癌の末期になっちゃって〜。
家内とも相談して遠方のホスピスに入る事にしたんだよね〜

もっとサヤマで仕事をしたかったけど無理みたいだから、社長に俺の後は坂田くんにして欲しいってワガママ言っちゃった。

坂田くん。片山文具から10年以上の付き合いになるけど、君ならサヤマを任せられるからさ」

「市川常務…」

「でもね、今の及川専務は社長の親友だけどかなりのキレものだからボヤボヤ出来ないし、及川専務も相談役にしろ!
って社長に直談判しているみたいだからすぐに坂田くんは専務かな?」

「私はまだまだです。」

「及川専務は信頼出来る方だしわからない時は正直に教えてもらうといいよ。」

「はい。」

「俺の病院のこともあって、年明けから引き継ぎして欲しいんだ。
社長や専務にも了解済みだから」

「はい。」

「すまないね。お世話になるけどよろしく」

「はい。通院は?」

「もう。抗がん治療はしないって決めてるから時々スゴイ痛みがでたら薬を飲んでしのいでる」

「そうなんですか…全然知らなくてすみません。
俺……本当に残念で悔しいです。」

「ありがとう。でもね、俺もやっと覚悟したから…
坂田くん、年明けに辞令もでるからね。」

「はい。よろしくお願いします。」

「わざわざ、ありがとう坂田くん。
こちらこそ引き継ぎ宜しくお願いします。」

「はい…、では…失礼します。」



俺は深くお辞儀をして退室した。

市川常務は、にこやかな笑顔だった。

はっきり言ってショックだった。

まだ亡くなるには若すぎるだろ…悔しい…
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