Tear Flowes〜絶望の向こう岸〜
「ここに来い。俺がお前の家族を殺し、お前の仲間を殺した。お前の幼なじみを拷問したのも俺だ」

何の反省も感じさせない文章に、フィオナの心に憎しみだけが広がっていった。サルビアの指示を聞く余裕などなく、指定された廃工場へと走っているのだ。

どれほど走っただろうか。人気の全くない、誰にも邪魔されずに戦うにはちょうどいい廃工場が目の前に姿を見せる。

「……ここに奴がいるのね」

荒くなった呼吸を一旦立ち止まって整え、フィオナは迷わずに廃工場の中へと足を踏み入れる。

廃工場の中は全体的に埃を被っていて汚らしい。古びた機械などがそのまま放置されている。

そんな廃工場の中には、人の気配がいくつも感じられた。武器を手に隠れているのだろう。フィオナは警戒をしつつ、廃工場の奥へと足を進める。

「やっと来たか、待ちくたびれたぞ」

奥に入ると、目的の人物の姿は一瞬で目にすることができた。シオンと同じ黒い髪と瞳なのに、悪人だからか深い闇のように感じてしまう。黒いスーツを着て、マーティーは笑っていた。
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