Tear Flowes〜絶望の向こう岸〜
彼の態度にフィオナは苛ついたものの、表情には出さないように心がけ、口を開く。

「やっとあなたの姿を目にすることができましたよ。今まで、どんなに私やみんなが能力を使っても、あなたの影さえ掴むことはできなかったんですから」

「そりゃあそうだろうな」

マーティーは嬉しそうに笑い、舞台で俳優が芝居をするかのように気取った様子で歩く。そして、誰も予想していなかったことを口にし始めた。

「俺はブラックローズという名家に生まれたものの、双子が不吉だという理由で追い出された。その頃からだよ!自分の姿を他人に知られない能力を持ったのは。この能力は実に素晴らしい。誰からの干渉も監視もされず、自由に好きなことができるんだ。だから、人の復讐に手を貸しても捕まることはなかった。俺以外に能力者がいて、集まって捜査ごっこをしていると知った時は驚いたけどな!」

フィオナの頭の中に、彼の幼い頃の記憶が流れてくる。愛されるはずの家族から捨てられた悲しみ、孤児院や学校で人を信じられずに募っていく孤独、そして犯罪を手伝って自分も手を汚していく快感が伝わる。なんと悲しい物語だろうか。
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