離婚するので、どうぞお構いなく~冷徹御曹司が激甘パパになるまで~
夜景が見える個室の席について、お互いに一杯目を頼むと、鈴鹿は黒い長髪をそっと片手で耳にかける。
彼女から発せられるあまりの緊張感に、じつは会社の金を横領していたとか、役員の不倫現場を目撃してしまったとか、機密情報を漏洩してしまったとか、そんなネガティブな予想がいくつも上がった。
早く言ってくれ……。やきもきしながらそう思っていると、彼女は意を決したように、まっすぐ俺の目を見つめて、話し始めた。
「単刀直入にお聞きしますが、代表は、私が代表に気があることにお気づきですよね」
「は……?」
あまりに不可解な質問に、思わず間抜けな声が出てしまった。
そんなこと、一度たりとも思ったことなどない。
心の底から驚いて固まっていると、彼女は「もしかして、お気づきでなかったんですか」と、焦り始めた。
「申し訳ございません。とうにバレているものだと思い、前提で話を進めてしまいました……」
「いや……」
とりあえず、犯罪沙汰の告白ではなかったことにホッとすると同時に、今ふたりでいることがなおさらダメだということを瞬時に理解した。
「そういう話なら聞くことはできない」と言って帰ろうとした俺を察して、彼女は珍しく大きな声をあげた。
「代表がじつは結婚していたと知った時、胸が張り裂けるような思いでした」
「……何が言いたい。俺が君に応えられることはひとつもない」
「仮面夫婦だと仁社長から世間話で聞いていましたが、今はそうではないのですか」
これが、彼女が一番聞きたかったことなのだろう。
俺を帰らせないために勝手に話を畳みかけて、彼女は必死な瞳で俺のことを見つめている。
いつものクールな雰囲気は微塵もなく、何かにすがるような鈴鹿を見て、俺は正直困惑していた。
「この前ホテルの花を生けに来てくださった方が、奥さんなんですよね」
「そうだ。葉山家の優秀な後継ぎだ」
一言で答えると、鈴鹿は明らかにショックを受けていた。
でも、鈴鹿はそれでも怯まずに、問いかけてくる。
「葉山家とは長年懇意にされておりますから……、政略結婚的なものなのでしょうか」
「たしかに、親同士が決めたことではある。結婚相手など決めてもらったほうが楽だったからな」
「誰でもいいなら……、私も候補に入れて頂けませんか」
「鈴鹿は仕事仲間だ。それに今は、妻を愛している」
彼女から発せられるあまりの緊張感に、じつは会社の金を横領していたとか、役員の不倫現場を目撃してしまったとか、機密情報を漏洩してしまったとか、そんなネガティブな予想がいくつも上がった。
早く言ってくれ……。やきもきしながらそう思っていると、彼女は意を決したように、まっすぐ俺の目を見つめて、話し始めた。
「単刀直入にお聞きしますが、代表は、私が代表に気があることにお気づきですよね」
「は……?」
あまりに不可解な質問に、思わず間抜けな声が出てしまった。
そんなこと、一度たりとも思ったことなどない。
心の底から驚いて固まっていると、彼女は「もしかして、お気づきでなかったんですか」と、焦り始めた。
「申し訳ございません。とうにバレているものだと思い、前提で話を進めてしまいました……」
「いや……」
とりあえず、犯罪沙汰の告白ではなかったことにホッとすると同時に、今ふたりでいることがなおさらダメだということを瞬時に理解した。
「そういう話なら聞くことはできない」と言って帰ろうとした俺を察して、彼女は珍しく大きな声をあげた。
「代表がじつは結婚していたと知った時、胸が張り裂けるような思いでした」
「……何が言いたい。俺が君に応えられることはひとつもない」
「仮面夫婦だと仁社長から世間話で聞いていましたが、今はそうではないのですか」
これが、彼女が一番聞きたかったことなのだろう。
俺を帰らせないために勝手に話を畳みかけて、彼女は必死な瞳で俺のことを見つめている。
いつものクールな雰囲気は微塵もなく、何かにすがるような鈴鹿を見て、俺は正直困惑していた。
「この前ホテルの花を生けに来てくださった方が、奥さんなんですよね」
「そうだ。葉山家の優秀な後継ぎだ」
一言で答えると、鈴鹿は明らかにショックを受けていた。
でも、鈴鹿はそれでも怯まずに、問いかけてくる。
「葉山家とは長年懇意にされておりますから……、政略結婚的なものなのでしょうか」
「たしかに、親同士が決めたことではある。結婚相手など決めてもらったほうが楽だったからな」
「誰でもいいなら……、私も候補に入れて頂けませんか」
「鈴鹿は仕事仲間だ。それに今は、妻を愛している」