離婚するので、どうぞお構いなく~冷徹御曹司が激甘パパになるまで~
 花音に叩かれても泣き喚かれても、何をされても許してしまう。
 世の父親はみんなそういうものなんだろうか。



「今日は午後から幼児教室に行きたいんですが、送迎お願いできますか」
 十四時になり、私服に着替えた花音が、ソファーで紅茶を飲みながらそう問いかけた。
「ああ、もちろん。行くのは今日が五回目だったよな。小鞠は少しずつ慣れてきたか?」
「はい、あまり人見知りもせずに、楽しくやっていますよ」
「俺も一緒に参加していいならするんだが」
「れ、黎人さんが来たら教室が落ち着かなくなりますよ……大丈夫です」
 小鞠がどんな風に授業を受けているのか実際に見に行きたいところだけど、花音がどうしてか拒むので仕方がない。女性同士の方が気楽という意味合いなんだろうか。
 いずれにせよ、呼ばれてもいないのに強引にいくものではないと納得して、送迎だけで済ませることに納得した。
 あと三十分くらいしたら支度を始めなければ。
 そう思うけれど、俺は自然と隣にいる花音の肩にもたれかかっていた。
「れ、黎人さん……?」
「花音の匂い、落ち着く」
「そ、そうですかね……?」
「こっち向いて。花音」
 花音は俯かせていた顔をゆっくりこちらに向けて、俺のキスに応えてくれえる。
 まだ少し恥ずかしがってるくせに素直な花音が可愛すぎて、今すぐにでも押し倒したい気持ちになった。
 舌を入れながら、ぐぐっと体重を花音に預けると、ようやく彼女は慌てたように抵抗し始める。
「ちょっと、黎人さん! 小鞠が見てます」
「夫婦仲よくいることが、教育に問題あるか?」
「仲良くの、度が越えてます!」
「はは、たしかに」
 焦っている花音を笑うと、ぽかっと胸を軽く小突かれた。
 その手を取ってちゅっとキスをすると、また顔を真っ赤にして彼女は俺を叩いた。
 まずい、さすがにからかいすぎたか……。
 好きな子はいじめるタイプの癖が、この歳になっても抜け切れていないなんて、考えものだな。
「もう、ふざけてないで準備しますよ」
「はいはい、お姫様」
「その呼び方もよくないです!」
 花音に怒られながらも、なんとか外出する準備を始めた。
 こんな俺を見たら、弟の仁を始め、俺の家族はひっくり返るほど驚くだろう。
 らしくないことが、こんなにも幸せだなんて、花音と出会うまで知らなかった。



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