王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
怖い目に遭った哀れなシルディーヌに、神様はちゃんとラッキーをくれるのだ。これからはもっともっとしっかり神をあがめようと思う。
神様に感謝しつつ胸の前で手を組み、空に浮かぶ雲のようにほわほわした気分でいると、ヌッと現れた腕に腰を捕まえられた。
ぐっと引き寄せられて、振り仰げばアルフレッドのワイバーンな顔があった。殿下に向ける視線が鋭く見える。
「アルフ?」
「殿下、ありがとうございます。自分が医官のところに連れていきます」
「ふむ、だが団長は、尋問があるだろう?」
「後でじっくり行いますので」
悪魔的な笑みを浮かべるアルフレッドの声は、いっそう低くなって迫力を増したけれども、「じっくりか」と呟いた王太子殿下はクッと笑みを零した。
「それは面白いことだな。私も立ち会わせてくれないか?」
「同席など、大変もったいないことですが……後程ご連絡します」
「ああ、待ってるよ」
笑って手をひらっとさせて、王太子殿下は去っていく。
ふたりの会話をぽかんと見ていたシルディーヌは「行くぞ」と引っ張られ、医官の診察を受けたのだった。