王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

 シルディーヌはじりじりと後退する。もう少し下がれば、アルフレッドの仮眠室の扉に近づく。素早く中に入って内側から鍵をかければ、カメリアたちは中に入ってこれない。

「残念だけれど、私はアルフの弱みじゃないわ」

 言いざまに、ぱっと身をひるがえした。

「逃がさない!」

 一瞬で近づいたガスパルの手に捕まえられた。素早く体を拘束されて、身動き一つできなくなる。

 ガスパルの手慣れた動作は新入団員のレベルじゃない。すごく強いと思えた。

 今まではそれを隠していたのだろうか。今日のために。

 シルディーヌは絶対に人質になってはいけないのだ。逃げなければならないけれど、どうしたらいいのか。

 ポートマスの言った『かな~りヤバイ』こと。

 どんなことなのか具体的には分からないけれども、騎士団員の言うことはだいたいあたるのだ。とにかく今は敵を怯ませて、隙を作るしかない。

 シルディーヌは意を決し、ぐっと拳を握った。

「弱点じゃないのはほんとうよ。だって、アルフは、私が困っているのを楽しむような、ドSだもの! 私の命なんて、まったく惜しくないって言うわ!」

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