王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

 力説すると、カメリアはガクッと肩を落とした。

「うそを言っても無駄だって言ったでしょ。この目でしっかり見ていたもの。あの黒龍の騎士団長が〝一目散にあなただけを助けた〟ところ。ほかにも動く馬車に迫った人がいたのにね?」

「じゃあ、押したのは、カメリアたちなの?」

「あれは、別口。私たちは知らないわ。でも、おかげで弱点がはっきりしたのはラッキーだったわね。あなたは侍女たちに恨まれてるみたいよ?」

 ──侍女たちに?

「どうして?」

「そんなことも分からないの? あなたは貧相な容姿なのに、なぜか人気の騎士団長のそばにいるし、騎士団員に護衛されていたでしょう。取って代わりたいと思うご令嬢がいてもおかしくないわ」

「貧相は、余計だわ」

 自覚していることだけれど、そばかすのある素朴な女性のカメリアに言われると、衝撃が大きい。

 カメリアの話は真実かもしれない。ポートマスたちと一緒にいただけで睨まれたのだった。

 でも騎士団員と仲良くなりたかったら、怖がらずに積極的に話しかければいいのだ。それをしないで、突き飛ばすなんて間違っている。

「黒龍殿のお仕事なら、喜んで代わってあげるわ」

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