王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

 でもそれを言ったらヘンリエッタは逃げて行ったのだ。

 騎士団員に近づきたいなら、ペペロネみたいに頑張ればいいのだ。……頑張られても、アルフレッドは誰にも渡せないけども。

「酷いわ。あんまりだわ」

 ぶつぶつと呟いていると、カメリアが焦ったような声を出した。

「ああっ、しまったわ! この人ののんきなペースに巻き込まれて長居しちゃったじゃない。急いで外に出ないと、団長が戻ってきちゃう!」

 カメリアは執務机にある羽ペンを手に取り、紙になにかを書き込んで置いた。

「さあ、一緒に来てもらうわよ」

「カメリア、この人の口が利けないように、暗示をかけるはずだったのでは?」

 そんなことをされたら、助けを呼べなくなってしまう。シルディーヌがギョッとしていると、カメリアが苛立つように言い放つ。

「あれは結構時間かかるの。もうそんな暇ないわよ。さるぐつわをするしかないわ」

「やめてっ」

 ギョッとしたシルディーヌは首を振って抵抗するけれど、強い力で押えられて難なく口を覆われてしまった。

「暴れたら、目隠しもするわよ」

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