王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
喋れない上に視界も遮られたら隙を見て逃げられない。懸命に首を振って暴れないアピールをしてみると、なんとか免れられた。
けれど、このままおとなしく連れ去られたくない。
足を踏ん張って動かないように頑張るけれど、背中を押されただけで吹っ飛んでしまう華奢な体ではガスパルの腕力には勝てない。
シルディーヌはいとも簡単に団長部屋から出された。廊下はしんと静まっていて、薄暗くなっている。
見える範囲には誰もいない。普段から二階には人がいないのだ。今はフリードも一階にいるかもしれない。
ようやくアルフが戻ってきたのに、また会えなくなってしまうの?
夏空のような瞳をじっくり見ていないし、ろくに話もしていない。
鼻の奥がツンと痛くなった時、どこからともなく声が聞こえてきた。
「団長を思いのままにして、どうするつもりかな?」
「野望を抱いている国に売るのよ。もちろん、あなたはエサとしてつけるわ……って、誰なの!? どこにいるのよ!?」
カメリアの焦った声が響き、シルディーヌを拘束しているガスパルの手が僅かに震えだした。