王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
ガスパルに引き起こされて、お尻を擦りながら彼を睨んだ。睨んだけれどもまったくひるまなくて、がっちりとお腹の辺りを抱え込まれる。
「俺たちの楯になってくれ」
──だから、楯の役目はできないの!
そう言いたいけれど、ままならないのが辛い。
「団長、殺気を抑えてくれないか。隣にいる私がキツイよ」
「王太子だろう、それくらい堪えろ。いい加減このクソ忌々しい仕掛けから出てもいいか。奴らが逃げちまうだろう。さっさと命令しろ」
いったいどちらが上の立場なのか。
王太子殿下に対する口に利き方ではない。アルフレッドの理性のタガが、すっぽり外れているようだ。
ということは……『かな~りヤバイ』ことが起こってしまう?
それよりも不敬罪になりはしないか。シルディーヌはあわあわしてアルフレッドを探した。
懸命にキョロキョロするシルディーヌの目に妙なものが映った。
──あんなところに、風景画なんてあったかしら?
いつも掃除をしている廊下だけれど、見たこともない巨大な絵画が壁に飾られている。
でもなんだか立体感がないような、ペラペラのような。