王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
首を傾げてそれを見つめていると、絵がぐにゃりと歪んだ。
──ええっ!? なんで?
「まあ、下には騎士たちがいるし、到底逃げられないさ。でもこのままじゃシルディーヌが気の毒なのはたしかだ。……団長、この状況を解決せよ! 抜剣を許す!」
「ああ、すぐに、済ませてやる」
お腹に響くような重低音の声。ついでシャッと布を切るような音がして、ペラペラな絵画がバサーッと落ちた。
ヒラヒラとぶら下がる布の残骸の下には、鬼神のごとき表情のアルフレッドと苦笑気味の王太子殿下、それに鋭利な顔つきのフリードがいた。
「あむむ(アルフ)!」
くぐもった声を出すシルディーヌの拘束された姿を見たアルフレッド。そのワイバーンのような目が一瞬見開かれ、スーッと細くなった。
気のせいか、アルフレッドの体の周りにある空気がゆらゆら揺れているように見える。
「騎士団長! そんなところにいたなんて!」
慌てた様子のカメリアが、シルディーヌの喉にナイフを突きつける。
「こ、この女が大事なんでしょ! ほらっ、傷つけられたくなかったら、剣を捨てなさいよ!」