王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

「ほう……やってみろ。貴様がソイツを刺すなら、俺は、貴様らの骨の欠片も残さずに切り刻んでやる」

 薄暗い空間でアルフレッドの持つ剣だけが白く光って見え、なんとも不気味だ。

「な、なんですって!? 恋人じゃないの? ちょっとあなた、あなたも命乞いしてよ! でないと、本当に喉を突くわよ!」

 必死の形相のカメリアにさるぐつわを外されるけれど、シルディーヌは首を横に振るだけだ。

「無理よ。だって……ドSなんだものっ」

 だから言ったのにとカメリアを見れば、彼女は血の気がひいたような顔色になった。

 いろんな想像していたのとほぼ同じ反応をされて、シルディーヌだってしくしくと泣きたい気分だ。

 人命優先でお願いしたいけれど、王太子殿下にも失礼な口を利くくらい理性が飛んでいるのだ。シルディーヌの言うことなど、きっと耳に届かない。

「貴様のナイフが動く前に腕を切り落とす。次は左腕を斬り、脚を落とし、腹をさばいて、最後に首を落とす。案ずるな、痛みなど一瞬だろう。骨まで綺麗に砕いてやる。感謝しろ」

 地獄の底から響くような声が出されて、シルディーヌはゾゾッと震える。

 ──ほ……本気だわ……!

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