王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
「そんなハッタリ信じるわけないわ。遠い間合いから、人が切れるわけないでしょ!」
「ふん、ならば、試し斬りしてやろう」
構えたアルフレッドの剣が動いたように見え、空気の小さな塊が飛んできた気がした。
え、と声を出す間もなく、カメリアの纏め髪がほぐれて肩に落ち、切られた赤毛が数本ハラハラと空に舞っていた。
「ウソ……今ので、髪紐だけを切ったと言うの……?」
わなわなと震えて呟くカメリアの声が、静かな廊下では妙に響いて聞こえる。
シルディーヌやほかの部分に傷ひとつつけずに、ピンポイントで小さなものを斬れる腕前……。
鍛錬場で見た鬼神の剣さばきと同じで、間合いを詰めることなく攻撃しているのだ。脅しではなく、簡単にカメリアたちを切り刻めそうである。
「あのっ、アルフ、命は大切なのっ。だから、もう少し穏便に解決してっ。人命最優先でお願い」
「それはできないな。お前に害をなす者に容赦はしない。女も男もない、すべて排除する。次は本気でいく。……ガスパルと女、短い命だったな。謝罪する気があるなら、地獄の番人にしろ」