初老アイドルが一般人女子との恋を成就させるまで
初老アイドルが一般人女子との恋を成就させるまで

0 楽屋にて

『“初老”って元々40歳ぐらいのことらしい。え? ってことは、supernovaのコウって、つまりは“初老アイドル”ってこと????』



「ってつぶやきが、めっちゃバズってるよ、航太」



ある昼下がりのテレビ局の楽屋で、小倉航太は、爽やかな笑顔を浮かべて告げる向かいに座る北村暁を、口元をひくひくさせながら見つめていた。



「おい暁…、それなら43歳のお前も“初老”だろ」
「でも、元のつぶやきには、航太の名前しかないよ?」
「やっぱこないだのMスタで、『現役最年長アイドル』って言われたからじゃない?」
「だな」



暁ではない、でも航太にとっては聞き慣れた二人の声に、航太は反射的に目を向ける。
視線の先には、少し離れたところに座っていた遠山一仁と今井琉星が、こちらに顔だけ向けて会話に参加していた。



「てか一仁と琉星、お前らもあと3年で“初老”だからな?」
「でもまだなってないもーん」
「ムカつく!一仁のその『もーん』がムカつく!」
「そんな怒ると血圧上がるぜ?“初老リーダー”」
「うるっせぇよ琉星!」
「まあまあ航太、どう頑張っても年には勝てないんだから」
「暁お前、フォローする気ねぇだろ」



暁の浮かべる爽やかな笑顔に苛立ちを覚えつつも、航太はそれを鎮めるため、自分のミネラルウォーターを一口飲んだ。



「大体この年まで、“アイドル”やってるとか思わなかったし」



小倉航太、45歳。職業、アイドル。
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