虹色のキャンバスに白い虹を描こう
僕は彼女と同じ景色を見たかった。たとえどんなファインダー越しだったとしても、変わらずに見えるものはあるはずだった。そういう共通項を見つけていきたかった。彼女のためなら、彼女といるなら、それが可能だと思えたのだ。
「まもなく終点、終点です。お忘れ物のないよう――」
バスのアナウンスが流れる。
口を噤んだ僕に、近江さんはぽつりと零した。
「いいね。何だかすごく感動したよ」
バスが止まる。到着のアナウンスが鼓膜を揺らす。
「ねえ。もし良かったら、僕もついて行っていいかな」
「え?」
思わず彼の顔を見やった。カメラを抱えた近江さんが、真剣な眼差しで緩やかに微笑む。
「登山が趣味っていうのは嘘じゃないんだけどね、こっちの方が本命なんだ。君たちといたらいい写真が撮れそうな気がする」
返答に困っていると、清が「いいですよ!」と自身の胸の前で拳を握った。
とんとん拍子で進む話の展開に困惑は拭えないものの、彼女が気にならないのであればそれでいいかと自分の中で結論付け、僕も追随する。
「僕らは別に構わないです。お好きにどうぞ」
「ありがとう。さて、じゃあ降りようか」