虹色のキャンバスに白い虹を描こう
彼女が指さした先にあったのは、まさしく大きなブランコであった。少し飛び出したところに足場が作られており、後ろから前に揺れれば、空中で浮いているような構図になる。
「最近できたばかりみたいでね、若い人に結構人気だよ。今なら空いているから、乗ってきたらどうだい?」
「えーっ、乗ります、乗りたいです! 航先輩、行きましょう!」
ぐいぐいと服の袖を引っ張られ、連行されるような形で彼女と共にブランコへ近付いていく。近付けば近付くほど足場の高さを実感し、無意識のうちに歩幅が小さくなった。
「どうしたんですか?」
立ち止まった僕に、清が首を傾げる。
「いいから乗ってきなよ。僕はここで見てるから」
「あれれ、もしかして怖くなっちゃいました?」
「うるさい」
「冗談ですよー。じゃあ私、乗ってきます!」
なぜか敬礼をして気合十分な彼女は、一切躊躇することなくブランコに腰を下ろした。
「気の毒だけど、今日は見えないんじゃないかな」
前方に意識を向けていたので、いきなり背後から飛んできた声にやや驚く。
僕の横で足を止めた近江さんは、つとこちらに視線を寄越した。清がいる手前、先程は答えを濁していたのかもしれない。
「……そうですか」