虹色のキャンバスに白い虹を描こう
別段落胆するということはない。もともと出現率は低く、珍しい現象だ。
たった一度、たまたま今日、ここに来てうまく見られるほど、都合よく空は微笑んでなんてくれない。
分かってはいても、わざわざ彼女を連れ出して、僕は一体何をしに来たのだろうと消化不良な部分があるのも事実だった。
「君たちはどうして、学校を休んでまでここに来たんだい」
清がブランコを漕いで、前から後ろ、後ろから前、と少しずつ振れ幅を大きくしていく。
「……彼女には今、色が見えていません」
彼の質問に、なるべく誠実に答えたかった。それが僕の今日ここへ来た意味であり、彼女への想いでもあるからだ。
「たくさんの景色を、彼女に見せたかったんです。どれかがきっかけで彼女の世界が取り戻されるなら、それに越したことはない。でも、たとえ戻らなかったとしても」
どれだけ褪せても、君がもし諦めてしまっても、僕だけは君の世界を守る。僕の世界を明け渡した日から、それはもう決定事項だったのかもしれない。
「そのままでいい。彼女の世界は絶対に綺麗で褪せないと伝えられるのは、僕だけだと思った」