クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
「え?」
「この前、いきなり沢山のおもちゃを持って行って。」
「ああ…。気がついたのね。あんなに沢山、子供には目の毒だもの。
だけど、お礼を言います。ありがとう。」
「何をプレゼントすればいいのかわからなかったんだ。」
「そう…。大きなおもちゃばかりだったから、実家用にさせてもらったの。
ここは、狭いから置けなくて…。」
玄関先で小声で会話していると、キッチンから美晴の声が聞こえた。
「わあ~、美味しそう。お母さん、食べていい?」
「一個だけよ。」
「沢山あるから、美馬のおじさんも一緒に食べようよ!」
無邪気で残酷な誘い文句だ。
「どうする?時間あるならコーヒー飲んでいく?」
「いいのか?」
「美晴からのお誘いだもの、無視できないわ。」
「ありがとう、お邪魔するよ。」
キッチンへ嬉しそうに歩いて行く航の後ろ姿を見ながら、梓は驚いていた。
『すまない。』『ありがとう』
そんな言葉を聞く日がくるとは…10年前の彼からは想像すら出来なかった。
あの頃の彼は人に頭を下げるのが嫌いで、言葉も少なく表情も怖かった。
そんな彼がクールに見えて梓は大好きだったが、
当時健在だった梓の父には、世間では通らないぞとよく叱られたものだ。