Don't let me go, Prince!


 何を言っているの?誰が可愛らしい妻で、眠る姿が小動物のようですって?

 言われた言葉が信じられなくて、ただ唖然とするしかなかった。まさか弥生さんが私の事をそんな風に見ていたなんて思いもしなかったのよ。

 私が貴方の前でいつ可愛らしくなんて振る舞ったっていうのかしら?貴方の言う低い身長だって167?はあるのよ?どう考えても小動物なんて可愛い存在に見えるはずがないじゃない。

「180?もある貴方の身長より背が低いのは当たり前じゃないの!弥生さんより背の高い女性の方が少ないと私は思うわよ?それに小動物って……あ、貴方がいつ私の寝相を見たって言うのよ!」

 彼の言葉を頭の中で反芻している内に、段々と顔が熱くなっていくのが分かる。可愛いと言われて内心は嬉しいが、そんな風に思われていた事への恥ずかしさの方がまだ勝ってしまう。

 言った本人は全く恥ずかしがってなどいない。いつもと変わらない無表情のまま、何かおかしなことでも言いましたか?なんて言ってきそうな雰囲気だ。

「私は何か変な事を言いましたか?店員は渚に似合う下着を持って来てくれたと思いましたが、不満でしたか?……渚の寝相は新婚旅行で同じ部屋に泊まった時に見ましたよ?ああ、渚がいつも先に眠っていたから気付いていなかったのですね。」

「新妻の寝相を黙って観察してるなんて、弥生さんの悪趣味っ!下着だってこんな可愛いのは私には似合わないって本当は分かってる癖に!!」

 恥ずかしさから私は弥生さんに向かってヒステリックに喚いてしまう。……だって、だって!そんな風に私の事を見ているなんて思いもしなかったのだもの。

 あの旅行の時だって指一本触れられず、弥生さんは本当は私に興味なんて無いのだと思い込んで。泣きそうになるのを耐えながら眠りについていたのだから。

「落ち着きなさい、渚。さっきの会話で、渚の方から私好みの下着を着て見せてくれると言ったのですよ?見たくないとか似合わないと思っているのなら、私は選んできていません。」


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