Don't let me go, Prince!



「どうしてここに?は僕も同じことを言いたいんだけれどね。あの人が本当に《《ここに》》誰かを連れてくるなんて……」

「それってどういう……?」

 私はけいさんの言い方が少し気になった。今の言い方だとけいさんは、弥生さんの事を知っている?
 彼があの時私に話しかけてきたのはナンパではなく、もしかして他に何か理由があったのだろうか。

「そんなに睨まないでね。全部、僕の意思でやってる事じゃあないんだから。」

 気付かないうちに私はけいさんを睨んでいたらしく、ちょっと困ったように彼は笑っている。
 《《僕の意思》》では無い、という事はけいさんは誰かに指示されているのだろうか?

「けいさん、貴方もしかして……?」

「ごめんね、もう会う事はないと思ってたから……騙すつもりなんかじゃなかったんだけれど。」

 困ったような彼の顔に弥生さんが重なる。そうだ、やっぱりこの人は――――

「何をしてるんですか、神無。渚を困らせるようなことをしたら許しませんよ?」

 私を撫でようとしていた手を弥生さんに掴まれ、神無さんは驚いた様子。ここに弥生さんが来たことに驚いたというより、彼の言動に驚いているようだった。

「やっぱり貴方が神無さんなの?どうして前に会った時は偽名なんかを。」

「ごめんね。僕も後ろめたいことがあったから、つい。あの時はまだ渚ちゃんの事をどんな子かも知らなかったしね。」 

 彼にも何か言いにくい理由があるようで、ハッキリとした答えはくれない。こういうところ兄弟でそっくりだわ。

「二人は私がいない時に会ったことがあるのですか?いったい、いつ……?」

 私達のやり取りを聞いていた弥生さんが問いかけてくる。そういえばけいさんのことは弥生さんに話していなかった。


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