フォンダンショコラな恋人
「なるわね。多ければ多い方がいい。影響力が大きければ企業からの案件も大きいものが持ち込まれるし」

「企業からの持ち込み? 口コミとかするの?」
「それじゃステマになっちゃうわ。それはステルスマーケティングと言って違法なの。広告だと明記して意見を載せるとかはよくあるけど」

「難しいわね」
「そうでもない。ねえ、私のことはどうでもいいの。翠咲さん、本当にお兄ちゃんの彼女なの?」
「えーと……多分?」

先日の流れからすると、多分そのはずだが改めて聞かれるとそんな回答になってしまう翠咲だ。

「そこはハッキリ肯定するところだろ」
お風呂から上がってきた陽平が翠咲の頭にポン、と手をのせた。

「そうなんですけど、私もまだ実感わかなくてー」
「へーえ?じゃあ実感わくくらいまで、思い知りたい?論より証拠ってこういう時に使うんだよな?」

だから、目が怖いんだよなぁ。
翠咲はへらりと笑顔を向けた。

「お口で陽平さんに勝てる気はしません」
「論ずる気はないよ?」

口元をきゅっと笑みの形にした陽平が、そんな風に返してくる。
論ずる気はない……その意味を改めて考えて、翠咲は顔が熱くなった。
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