フォンダンショコラな恋人
「お兄ちゃんがデレてるわ」
「え?」

「いえ、翠咲さんて何している人なの?」
「会社員です」
「業種は?」
たたみかけるような愛梨沙の質問に、陽平が割って入った。

「金融機関だ。なんでそんなこと聞く?」
「割とまともそうだし、あんな返しをしてくる人ってどんなお仕事しているんだろうって思ったのよ。インフルエンサーと聞いてもピンときていない風だったし」

確かにピンと来なかったが、アラサーならばそんなものではないのだろうか。

「偏見のある目で見ない人は好きだわ」
「ああ、翠咲はあまり先入観で人を見ないようにしているんだろ。仕事上そういうところもあるよな。公平に見ようとする、というか」

陽平がそんな風に見てくれているなんて、翠咲は思っていなくて、照れてしまう。

「その割には僕にはツンツンしていたけどなあ」
あははー。ツンツンしてた、かぁ。
そういう言い方もあるよねー。

「だって、陽平さんはお客様じゃないもの」
「本当に後で覚えていてほしい」

「イチャイチャするなら、勝手にして。分かった。私は今日は帰る」
そう言った愛梨沙はソファを立ってカバンを手にしている。
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