フォンダンショコラな恋人
「用事あったんじゃないのか?」
「契約書、来ているから確認してほしかったの。メールで送るわ。時間がある時に見ておいてくれたらいいから」

淡々と要件を伝える愛梨沙と淡々と受ける陽平は驚くくらいに似ていて、間違いなく兄妹なのだと翠咲は確信して笑ってしまう。
「分かった」

愛梨沙はてくてくと玄関に向かって歩いていった。

「女の子1人で帰るの?こんな遅くに」
「うん。タクシーで帰る」
愛梨沙は淡々としているけれど、翠咲は心配になってしまった。

──こんな美少女が夜に一人で出歩いたら危なすぎるじゃない!

「タクシーに乗るまで一緒に付いてくから」
翠咲はパーカーを羽織って、愛梨沙を追って玄関に向かう。その後を陽平が追ってきた。

「翠咲が行くなら僕もいく」
妹が行くから一緒に行く、ではないんだろうか。

3人でマンションを出て、大きな通りまで歩き、タクシーを捕まえて愛梨沙を乗せた。

「お兄ちゃん、翠咲さんと仲良くね」
車に乗り込みながら愛梨沙はそんなことを言う。

「言われなくともな」
それにも陽平は淡々と返事していた。
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