フォンダンショコラな恋人
愛梨沙にどういう心境の変化があったかは分からないけれど、認めてくれた、ということなのだろうか?

しっかりタクシーを見送ったあと、ん、と陽平に手を差し出されて、翠咲はその手をきゅっと握る。

翠咲の手を握ったまま、陽平はベッドルームに翠咲を連れて行った。
陽平はベッドに腰かけても、翠咲の手をつないだままだ。

こんな時も、陽平の感情は見えない。
それでも、なぜか翠咲は不安な気持ちにはならないのだ。

それは手をつないでベッドに腰かけ、真っすぐ翠咲を見てくる陽平の目が温かいからだ。

「愛梨沙があんな風に人に懐くことは珍しいんだ」
「そうなの?」

確かに表情は分かりにくいかもしれないけれど、あんなに可愛いのに?

翠咲は陽平の隣に座って胸元にもたれた。そんな翠咲を陽平はそっと頭を抱き寄せる。

夜のこんな時間は、なんだかとても静かに感じる。陽平の顔は見えないけれど、声は胸を通じて響いた。

「子供の頃はもっとお人形のようだった。けれど、可愛らしすぎて、連れ去られそうになったり、同性からの妬みもすごかったみたいだな。あまりにひどくて、学校に行けなくなって、勉強はほとんど僕が教えた。ああ見えて頭は悪くない」
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