フォンダンショコラな恋人
「ああ。そんな感じしました。すごくしっかりしてるなって」

そんな翠咲の声を聞いて、陽平がふっと笑う気配がした。
そうして、ぽつん、と言葉が落ちてくる。

「街中でスカウトされて、モデルの仕事を始めてやっと今社会と接点が持てているって感じだな」

なんとなく、綺麗で可愛いことは幸せなような気がするが、そんなことであの可愛い愛梨沙が苦労をしてきたなんて、翠咲にはとても気の毒に感じる。

陽平とこんな風に静かに話をすることはあまりなくて、とても穏やかな気持ちで話しているこんな時間は翠咲には幸せでもある。

その声が淡々としていて、落ち着いていて、とても自然だからだ。
こういうところも翠咲には好ましく思えるのだ。

「陽平さんはそういう苦労はなかったの?」
翠咲は陽平の胸元に甘えるように頭を擦り付ける。
それに気づいた陽平がすり……と翠咲の頭を撫で、つむじにキスをする。

「学生の頃はそうでもなかったな。結構生徒の自主性を重んじる学校だったし、それと僕みたいのは個性の一つで完結していたしな。愛梨沙は、たまたま同級生に問題があるやつがいたんだな。あれもあんな性格だし」

「素直でいい子だけどな」
「嘘がつけないんだ。良くも悪くも」
「そういうところは陽平さんと似てるのね」
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