フォンダンショコラな恋人
『初めまして。翠咲の母です。あら、翠咲、本当にいいお話なのね? まぁー、嬉しいわ』

笑い転げている翠咲に無表情な顔を向けた陽平が、その身体をぎゅうっと抱きしめる。

その仕草に翠咲がドキマギしてしまうと、陽平は嬉しそうな顔になっていた。
「翠咲さんと結婚前提で一緒に住もうという話が出ていまして」

『あら、そうなの。でしたら今週末、お待ちしていますわ』
「お母さん、堅苦しいのはやめてね。私も陽平さんもそういうの、あまり得意じゃないから」

得意ではない、というのは堅苦しくなってしまうと、どこまでも業務になってしまいそうな怖さがあるからだ。

『はいはい』
電話の向こうでくすくす笑っている声が聞こえた。母は翠咲のことがよく分かっているからなのだろう。

その後日程や時間などの打ち合わせをして、翠咲は電話を切った。

「もー、陽平さんてば業務みたいなんだもの。笑ってしまったよ」
「すごく緊張した」
「陽平さんでも緊張することなんてあるんだね」

そんな話をしていたら、あのー、と営業担当者が入ってくる。
「お部屋はいかがでしょうか?」
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