フォンダンショコラな恋人
そう言って、陽平は翠咲を愛おしげに見た。
仕事中の表情のない陽平ではなくて、プライベートな姿だ。

翠咲はそんな陽平の姿に、胸がきゅんとしたのを感じた。
そして、自分のことをよく分かっていてくれることもとても嬉しい。

「事件の後は僕が彼女を一人にしておくことが心配でマンションに来てもらっていたのですが、利便の良いところを見つけたのと、翠咲さんとは一緒にいて心地いいと言うことをとても感じました。僕は正直他人といることが難しい面倒な人物だと思うんですが、彼女はそれにも対応できる稀有な人です」

「面倒で言ったら私も多分面倒だわ」
陽平の言葉に翠咲も応える。

「いい子だけど真面目すぎだものねー」
母の言葉に父もうんうんと頷いていた。

「そんな訳だからね、そんな翠咲を受け入れてくれる方がいると言うのは親としてとても嬉しいんだよ」

「そう言っていただけて嬉しいです。僕は幸せにしますという言葉は陳腐で好きではないんですが、今後彼女と一緒ならとても楽しく過ごしていけそうだと思うんです」

嬉しそうな母がそれを聞いて、涙ぐんだのを翠咲は見てしまって、もらい泣きしそうになったのだ。

「そうね……本当にそう。一緒に楽しく過ごしていきなさいね」
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