フォンダンショコラな恋人
「うん。楽しいことばかりではないけれど、翠咲はこう……先を見過ぎるところがあるから、それにも倉橋さんなら充分ご理解いただけそうだし」

父にも気の合う2人だと言ってもらえて、翠咲と陽平は顔を見合わせて笑顔になった。

「結婚を前提に一緒に暮らしたいと思います」
「まあ、翠咲もいい年だしねえ。何か言うようなことはないよ。しかも倉橋さんはとてもしっかりしておられるし」

「お父さん、陽平さんはね『お前みたいなやつに翠咲はやらん!』って言われたらどうしよう、なんて言ってたのよ」

「翠咲……それ、言わないでよ……」
誰が見ても整っている陽平の顔が赤くなって、その場にいた全員の胸を鷲掴みにしたのは、秘密の話である。


出会いは確かに最悪だった。
けれど、そんな苦くて固い人が、付き合っていくうちに、甘くて熱い人なのだと知った。
それはまるでフォンダンショコラのようで。

──私、フォンダンショコラは好きなんだよね。

翠咲の恋人は『フォンダンショコラな恋人』だったということなのだ。


     ✽+†+✽―END―✽+†+✽


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