フォンダンショコラな恋人
ありがちなことなのだが、たくさんの案件を手掛けている担当者は、些末な違和感を感じ取ることが出来るのだろう。
そして、勘のようなそれはおそらく間違ってはいない。

けれど、それを赤の他人である倉橋に納得させることは、非常に難しい。

倉橋を納得させられないということは、当然裁判官を納得させることも困難なわけなので、現状では難しいと言わざるを得ないのだ。

「なにが、不足でしょうか?」
「客観的に判断できるものを出来るだけ多く集めた方がいいです。」
「集めたつもりですが」

「これでは、支払い謝絶は出来るかもしれませんが、そこから係争に至った場合に、裁判所を説得するには不十分なんです。結果、支払う事になります」
とても、真剣な様子の宝条に引っ張られ、倉橋も真剣になる。

「分かりました。では、もう少し資料を集めてみます」

悔しそうな様子になんとかしてあげたいとは思ったが、先のことを考えると彼女のためにもハッキリと言った方がいいと判断した。

「お時間頂きありがとうございました」

必要なことをテキパキと伝え、必要最小限の時間で退出した彼女に、倉橋は少し好ましい気持ちにはなった。
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