フォンダンショコラな恋人
けれど、そこが上手く出来ない所が倉橋の倉橋たる所以だ。

「もう少し揃えて、また、お越し下さい」

その時は相談に乗るからという気持ちだったのだが、きっ!と宝条に睨まれて
「分かりました」
と固い表情で言われた時は、多分どこかで自分はまた間違えたんだろうなあと思った。

帰りの電車の中で見た彼女の名刺には『主任』の文字。

役席だったのか……と改めて思う。
道理でしっかりしている訳だ。

今までも、もちろん手を抜いたことはないけれど、この案件はきっと彼女の中でとてもこだわりがあるのだろうと察したし、自分も手を抜かずにやろう。
倉橋はそう思ったのだ。


そうして、訪れた次の訪問日。
彼女は前回よりも硬い表情で現れた。
資料は先日より増えており中々の厚みがある。

別途、調査会社等を入れて確認した様ではあるが、これもまた難しいもので調査員のセンスが重要なのだ。

必要なことを必要なだけ調査できる調査員は、実は少ない。

──言ってくれれば調査会社を紹介したのに……。
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