フォンダンショコラな恋人
「オフレコだけど公判終わって向こうの弁護士と話したけど、弁護士は止めたらしいよ。まだ早いって。でも依頼人が不払いだろうって譲らなかったらしい」

「こっちはまだ払うとも、払わないとも言っていないからね。確認したいから時間をくださいと言っているだけで」

「そこを淡々とうちの弁護士が突いていって裁判官もそれで納得して、この判決。いやー、倉橋先生お見事だったな。あ、今後の対応についてはうちが代理人として弁護士を通すってことになっているから、判断が決定したら、うちに連絡もらえれば結構ですよ」

「何だかその人、メリットあったのかしら……」
「ないね」
渡真利がキッパリと翠咲に言い切った。

「奴は法律を甘く見ている。法はそんな自分に都合の良いいいものじゃない。もし、奴が今度こちらの判断を気に入らないと言って、もしそこに虚偽があれば、裁判で嘘を言うことは認められないからね。それでも闘うなら、こっちも徹底的にやるだけだよ」

渡真利は感じが良い人だと思ったけれど、凄烈なところもある人なんだと翠咲は思った。
倉橋にもそういうところがあるんだろうか。

この淡々とした人でも、正義感で熱くなることが?
< 64 / 231 >

この作品をシェア

pagetop