フォンダンショコラな恋人
ふと翠咲が見る倉橋は相変わらずで、表情を変える気配もない。

「まあ、こいつも分かりづらいけど、今回は超絶に気合入っていたよな」

「いつもと同じです」
「そうかあ? 怒ってんのかなって思ったけど」

「宝条さんが……」

え⁉︎私⁉︎

「宝条さんがあれだけこだわっていたから、黒だと思っただけです。担当者の方はその道のプロですから、おそらく感覚で分かるんでしょう。僕はただ、それを確定する道筋をつけただけです。しっかり確認してくれていたから、もし今後、別件で裁判になっても問題はないと思いましたし」

先日もきちんと翠咲は仕事をしていた、と倉橋は言ってくれていた。
それでも、こんな風に言ってくれると嬉しい。

たとえ、能面であっても……だ。

「ありがとうございます」
「いいえ。仕事をしただけです」

うん。ですよね。
だと思いました。

課長の沢村と二人でお礼を言って、翠咲は渡真利と倉橋を見送った。

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