主人と好きな人。
不良大人。

何も考える事が出来ずに、電車に乗った。
会社には体調不良で朝から連絡をすることが出来なかった。とありがちな嘘をつき遅刻するように伝えた。

ガタンガタン

電車のリズムに合わせ体が揺れる。
トットゥルっと間抜けな音がカバンから響いた。


「・・・・・・・・・。」


スマホの画面ロックを解除すると龍之介からラインが来ていた。


『ゆかさんおはよう!元気ー?』


脳天気な文章。スマホをタップし返信をする。


『元気だよー♪』


送信するとすぐに返信が来る。


『ほんとー?眠くない?』

『眠くないよ。大丈夫』


慣れた手つきで返信を送り視線を前に置くと
グリーンのパーカーにデニムパンツを履いた龍之介が立っていた。


「元気そうには見えないけど?」

「え?」

「元気ーって言う割には顔死んでるし。」


ふざけて睨みながら龍之介があたしの右隣に座る。


「ゆかさんこの時間に仕事行くっけ?」

「あ、違うの!少し寝坊しちゃって」

「まじ?!やっぱ遅くまでラインしすぎたかな」

「大丈夫だよ?!すぐ寝ちゃってごめんね?」

「んーん?気にしなくていいよ!俺こそごめんね、付き合わせちゃって。」


ニコニコと八重歯を見せ笑う彼。
なんとなく目を合わせることが出来ずに俯いていると、髪の毛をそっとかきあげられた。


「え?!なに?!?!」

「今日はチーク変えたの?」


突然の出来事に驚いて、先程まで目を合わせることが出来なかった龍之介の目を見る。


「へんなのーゆかさん、右にしかチーク塗ってな・・・・・。」


今朝頬を叩かれた事を思い出し慌てて顔を逸らした。龍之介は驚いた顔のまま硬直している。

そのまま5つめの最寄り駅についた。
ドキドキしながら立ち上がり電車のドアに足を踏み出そうとすると右手を掴まれた。


「え?」

「どうしても仕事行かなきゃダメなの?」

「どうしてもって・・・。」


振り払おうとしても、掴まれた右手は簡単に解くことが出来ない。
やっぱり可愛い顔してても男の子なんだ。


「今日休も!」

「え?!なんで?!」


そんなやり取りをしてると電車の出入口ドアはプシューっと音を立てて閉まってしまった。


「あ・・・・・。」


電車のアナウンスが聞こえ龍之介が何も言わずに手を引き2人で椅子に座った。

ガタンガタンとリズムに乗った音に合わせ、
あたしと龍之介は2人で揺れていた。










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