主人と好きな人。
「はい・・・。すみません、明日は出社致しますので。」
電車を降り、すぐに会社に電話した。
体調不良と伝えていてよかった。すんなり休むことが出来た。
スマホの電源を切りバックにしまうと、
「電話終わった?」
と欠勤させた張本人が話しかけてきた。
「終わったよ。仮病使った。」
「不良大人だ!サボりだ!」
「ねえ!誰のせいよ!」
手を上げ怒ったふりをすると彼は八重歯を見せ笑った。
彼の奥には広い海が広がってた。
「ええええ海だー!!」
「海だよー!散歩しよー!」
龍之介が再びあたしの手を取り歩き出す。
あたしも拒否することなく手を握り返す。
傍から見てあたし達どんな関係に見えるんだろう。
年の差カップルとか?
なんなら一昨日で会ったばっかりなのに。
あたしスーツだし。龍之介はパーカー。
学校の先生と生徒に見られてたりして。
でも今日龍之介とここに来てよかった。
たぶん。
あたしは今この手を離すことが出来ない。
もし離してしまったら、
何もかもが爆発しそうな気がする。
何気ない会話をしながら砂浜に座った。
龍之介は「トイレ行ってくる。」と砂浜から離れていった。
「・・・・・・・・。」
ボーッとしながら海を眺める。
後ろめたさと、健次への怒り。
あーなんで、結婚なんてしたんだろって後悔。
色んな気持ちのまま海を眺めていた。
波と一緒にあたしのこのモヤモヤした気持ちも流れていけばいいのに。
冷たいものが右頬をに当たった。
「つめた!!!!!!」
アハハっとトイレに行ったはずの龍之介がお茶のペットボトルをあたしの頬に当てて笑っていた。
「キャーとか言わないの?」
「昔のドラマにありがちな感じに?」
「そーそー。」
お茶をあたしに渡しながら龍之介が隣に座る。
「青春ドラマとかなら今のほっぺたにヒヤッとした感じだとキャーだよ?」
「・・・・もっかいやる?」
「やんないよ」
ニコニコしながらあたしに渡したはずのペットボトルを手に取る龍之介。
「え?くれるんじゃなかったの?」
「あげるよ?」
カチカチっと音がするまでペットボトルの蓋を開けあたしにまた手渡してくる。
「ふぉっ優男ー」
「何その言い方(笑)」
龍之介はずーっとニコニコして海を見ている。
あたしは龍之介に貰ったお茶を1口飲み蓋を閉めたあと、赤みを帯びている頬に当てた。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「旦那さん?」
「え?」
しばらく無言だった龍之介が口を開く。
「それ。ほっぺ。旦那さんがしたの?」
「あー・・・うん・・・。」
「なんで?バレた?ライン」
「違うよ?」
「・・・・・なんもないの手を上げる人なの?」
「んー・・・・・」