主人と好きな人。
「多分・・お互いいっぱいいっぱいなんじゃないかな。」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

「例えばね?」


あたしは足下にあった砂を両方の手のひらですくい、わざと少しずつこぼして見せた。


「最初はね、こんな感じで愛がめいっぱい入ってるでしょ?」

「うん?」

「でもさ、夫婦って一緒にいるうちに不満が出てきちゃうものなんだよね。」

「・・・・・・・・・・・。」

「朝ごはんせっかく作ったのに食べてくれなかったとか、食べようとしてた朝ごはんがなかったりとか。毎日玄関に出てお見送りしてたのにそれがなくなってって、不満か少しずつ少しずつでて、愛情がどんどん減ってくんだよ。」


サラサラと両手から太陽に反射して輝く砂がこぼれる。


「・・・・・・・・・・・・。」

「不満が出る度に愛情足してけば愛が減ることもないのにね。足される事もなくなって、今はこんなになっちゃった。」


手のひらに残った砂を叩き落としてるいると、龍之介が両手のひらいっぱいに砂を乗せた。


「・・・・・・・・・・・・・。」

「俺が足りない分足してくよ。旦那さん足してくれないんでしょ?」

「・・・・・・・・・。」


あたしが驚いて龍之介を見つめると、龍之介がニコッと微笑んだ。
あたしは目を逸らし龍之介が渡してきた砂をパラパラとこぼした。


「それはどーも。」

「信じてないでしょ。」

「信じるってゆーか・・・龍之介まだ22歳じゃん。」

「歳なんて関係ないよ。」


龍之介の形のいい唇があたしの赤く腫れた頬に当たる。


「ちょ!!!何してんの!!」

「愛を足してみたんだよー」


恥ずかしいし、何を考えてるのか。
龍之介はあたしで遊んでるのかな。
俯いたまま、チラリと龍之介を見るとけたけた笑っていた。


「信じらんなーい。龍之介って軽いんだね!」

「軽くないよー?俺70キロぐらいあるし」

「そうゆう話してないんだけど・・・。」


笑い続ける龍之介を見て、真面目に受け取ってるのは自分だけだと思い大人の対応で交わすことにした。


「そうゆう事は彼女とか好きな人にしてください?」

「え?じゃあ大丈夫だねー」

「あたしは彼女じゃないですー」

「好きな人でしょ?」


平然答える龍之介に驚き、慌てて顔を見る。


「うはは(笑)ゆかさんすごい顔ー!」

「大人をからかわないでください。」

「からかってないよ?」

「からかってるじゃん。何が好きな人よ。」


ふざけて睨みながら龍之介を見つめる。


「んー。じゃあ気になる人かな。」

「・・・・また言ってる。」

「堂々と仕事サボってる不良大人だけど。」

「ちょっと!!!だから誰のせい!!」

「ごめんって!(笑)」


手を振りあげたあたしを見て龍之介が笑う。


今日龍之介と会っててよかった。


あのまま仕事に行っていても


朝の事を思い出してモヤモヤしていただけだった。


龍之介といて、健次の事を完全に忘れる訳では無いけど、


考えてなくていいだけましだ。



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