主人と好きな人。
仕事内容もいつもと変わらない。
企業の案件を済ませたり、オペレーター業務をしている社員のフォローをしたり。
仕事中は常にバタバタしているため健次の事を考える暇もない。
責任のある仕事だから、ちゃんと業務を全うしないと。


だけど今日は違った。
朝電車を降りた時に目を合わせた男の子の事が頭から離れなかった。
あの子はいったい誰なんだろう。
知り合いの弟とか?でもだったら覚えてるはず。
会社の取引先の子?それにしては若かった。
たまたま目があっただけ?でもそれなら会釈なんかしないよね。


そんな事を考えながらその日の業務を済ませた。
少し高いだけのパンプスなのに足がむくんでいた。
駅まで歩き朝とは違う駅のホームに向かいベンチへ座る。


「足・・・パンパンだなあ・・・。」


独り言をつぶやき浮腫んだ脚をもんだ。
今日は健次が夜帰ってこないし、お惣菜でも買って帰ろうかな。
それとも一昨日作ったカレーが冷蔵庫に入ってたしそれにするか・・・。
ぼんやり考え事をしながら電車に乗り込んだ。
スーパーでお弁当を買い家までの道を歩き帰宅した。


カバンから鍵を取り出し鍵穴に刺した時、右上にある表札に目が行った。
北川健次 ゆか
健次がもともと住んでたアパートにあたしが引っ越してきたから
表札は健次の隣にあたしが新しいプレートを差し込んだものになっていた。
軽く手をのばし「ゆか」の部分のプレートを外した。
これを取り外した所できっと健次は気づかないだろう。
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