(仮)愛人契約はじめました
じゃあ、なんで、こっち向いて歩いてるんだ、と思いながら、唯由はまた歩き出した。
離れた道を走る車の音が時折聞こえる以外、アーケードに覆われたシャッター街は静かだった。
なので、靴音がよく響く。
唯由の靴音は忙しげだった。
気づかれないよう小走りになっていたからだ。
蓮太郎の靴音は、長身で脚が長いせいか、そんな小走りな唯由に、余裕の一歩で追いついていた。
まさにネズミと虎だ。
小動物の心臓は速く打ち、大型動物はゆったりと打つというが、二人の靴音はそんな感じだった。
なんだかわからないが、ひねり潰されそうだっ、
と唯由は就職の最終面接でもここまで緊張しなかったというくらい緊張して歩いていた。
「お前の家はこっちか。
送ってやろう」
と後ろから蓮太郎が話しかけてくる。
「いっ、いえいえ、申し訳ないですっ。
すぐですし」
「遠慮するな。
下僕を守るのも王様のつとめだ」
……ん?
今、なんて言いました? と思い、唯由は振り向く。
離れた道を走る車の音が時折聞こえる以外、アーケードに覆われたシャッター街は静かだった。
なので、靴音がよく響く。
唯由の靴音は忙しげだった。
気づかれないよう小走りになっていたからだ。
蓮太郎の靴音は、長身で脚が長いせいか、そんな小走りな唯由に、余裕の一歩で追いついていた。
まさにネズミと虎だ。
小動物の心臓は速く打ち、大型動物はゆったりと打つというが、二人の靴音はそんな感じだった。
なんだかわからないが、ひねり潰されそうだっ、
と唯由は就職の最終面接でもここまで緊張しなかったというくらい緊張して歩いていた。
「お前の家はこっちか。
送ってやろう」
と後ろから蓮太郎が話しかけてくる。
「いっ、いえいえ、申し訳ないですっ。
すぐですし」
「遠慮するな。
下僕を守るのも王様のつとめだ」
……ん?
今、なんて言いました? と思い、唯由は振り向く。