(仮)愛人契約はじめました
 人気のないシャッター街を通り抜けようとしたとき、背後から人の気配を感じた。

 ここを通り抜ける人だろうと思いながらも、真後ろに近づく気配に、なんとなく足を速めてしまう。

 すると、相手はそれに気づいたように大股で歩き出した。

 あっという間に気配がすぐそこまで来て、唯由の肩をがっしりとした手がつかんだ。

 ひっ、と唯由が声を上げたとき、その手の主が、
「どうした、大丈夫か?」
と訊いてくる。

 雪村蓮太郎だった。

「あ、お、お疲れ様です。
 雪村さんもこっちですか?」

「いや」

 ……いや?
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